第5話 絶頂から谷底へ
2020年2月
この年は例年に比べて雪がほとんど降らない年だった
毎朝起きるたびにウンザリするような大雪も無い
スコップでの雪かきで次の日筋肉痛に襲われることも無い
なんて快適なんだろう
こう思えるようになったのは、私が雪国でそれなりの月日を過ごしてきた証拠なのかもしれない
もうずっと降らなくていいよ
こっちに来て初めて雪を見たときの少女のような気持ちは、もうとっくになくなってしまった
コンサートと心が楽になるお薬のおかげで
私は本当に穏やかで毎日が高揚感溢れる日々を過ごせていた。
今月はなんとまた歌手の方とお会いできるチャンスが巡ってきた
今度は町主催のイベントにゲスト出演するとのこと!
なんて自分は運がいいんだろう
毎日が本当に楽しい
SNSで知り合った同じ歌手の方のファンと交流するのも楽しい
これまでリリースされた曲をどんどん自分にインプットしていくのも楽しい
今度は何着てコンサートに行こう
プレゼントは何にしよう
県内の他のイベントやコンサートにも参加したい
身近にこんなに楽しいことがあるなんて
なんて私は幸せなんだろう
でも
なんか
うまく行きすぎているような
ちょっとでもこう思えていたのなら、また違った運命になったのかなあ
程なくして世界中に広まったコロナウイルスは
例に漏れず日本にも到達し、その影響は首都東京から徐々に広がり
こんな山に囲まれたのどかな町にも不穏な空気が届き始めていました
コンサートは全国的に軒並み中止
まだ都会から距離があったことが幸いし歌手さんのイベント出演は行われたものの
先行き不透明
そしてこれが私にとって最後のコンサートとなってしまう
この時思ったことを未だに覚えています
「やっぱりな。私の人生、こんなにうまく行くはずないんだよ」
がっっっくりと肩を落として
でももうこういう事には慣れてるというか
すぐに諦めの方向にシフトチェンジしていた記憶があります。
自分は幸せにはなれない運命なんだと、この頃は本気でそう思っていました
コロナが流行り始めると、みんなお家に籠もるようになりました。
ある夜、何気なく思い付いたささやかな私の願望
次にコンサートに行けるようになったときに、少しでも若々しくおしゃれして行きたい
この時点では
本当にただただ
この言葉のまんまの事だけの思考しかありませんでした
でもこれがある意味きっかけで
自分から行動して変えていく
ということに手を出し始めます。
次回、筋トレ始めます(笑)