雇われ嫁の備忘録

42歳主婦が人生を変えようと奮闘する話

第10話 願いを叶えるぞう

気がつくと話し始めてから30分以上も経ってしまっていた。

外はすっかり薄暗くなっていた。

「どうも遅くまで時間取らせてしまって申し訳なかったね。どうもありがとう。」

予定していた時間を大幅に過ぎてしまったにもかかわらず、若手従業員さんはニコニコしながら事務所を後にした

 

味方になってもらおうという私の目論みは手応えのないものに終わった。

「私、全然見えてなかったんだなあ……」

自分の不甲斐なさばかりが心に残る初めての会談が終了した。

 

一年後には代替わりをしようと思っていること

それには上司に頼らず自分たちで自主的に仕事を進めること

それにはまずこちらの部署から変えていきたいと思っていること

 

そんなことを私は伝えた

 

「うーん……それは無理なんじゃないですかねぇ〜……」

 

彼女から出た言葉は予想とは真逆だった。

彼女が言うには

 

私達は勝手に色々変えたりすることは出来ない

もうずっとこのやり方で定着してしまっているから変えられないと思う

上司にはとてもじゃないが意見など言えない

 

というものだった。

 

「意見が言えない」

 

悔しいがこれには私も納得せざるを得なかった。

そうなんだよ。

ここでは自分の意見はまず通らないんだ。

上司である夫の母のやり方ですべて回っているこの作業場。

上司の頭の中で組み立てられている、その日に決まるその日の絶妙な一日の計画。

一つでも順序を間違えたらバランスが崩れてしまう。

危うい計画。

でも

そうやって回すしかないんだ。

30年以上そういうふうにやってきたし

何より

他にできる人がいない。

上司しかこの現場を取り仕切る人がいないんだ。

そんな中で意見など通るはずがない

ガラガラと崩れてしまうから。

 

みんながそれを怖がるあまり、

意見が言えない職場になってしまっているのです。

 

ここまでは私も一応予想していました。

普段から勤務時間内での上司と従業員さんたちのやり取りを見ていたからです。

多分、不満要素として上がってくるだろうと思っていました。

 

でも次の提案をしたときに帰ってきた答えに私は面食らいました。

 

「あのぉ……私達、それ自分達でで買ってきて作業で使ってます………」

 

私がした提案というのが、本当に自分でも恥ずかしいんですけど

「作業効率を上げるために、使いづらい道具は使いやすいものに変えて作業したらどうだろう?」

というものでした。

それに対して従業員さんは言いづらそうに答えました。

「はい……やっぱり使いづらいんで……結構買ってきてるんですよ……でも買ってほしいとか言えなくて……そんなに高いものじゃないし……わざわざ会社に買ってもらうほどの物でもないし……いえ、大丈夫ですよ(笑)」

 

 

……………ッッッごめんなぁぁぁ……!!!(泣)

 

意見が言えないにも程がある。

彼女らは、自腹を切って手袋やらブラシやらを買ってきて使っていたというのです。

 

使いづらいのでこういうブラシを買ってもらえないでしょうか?

 

という意見さえも言えない雰囲気なのか!!!

うちの会社は!!!

 

私は恥ずかしいやら悔しいやらで大量の汗が吹き出してきました。

本当に申し訳ない

社長に言ってかかった分払うから!!!

と、私は必死に取り繕いました。

 

 

従業員さんたちが日々どんな行動をしているか

どんな悩みに直面しているか

 

今まで私は自分のことしか考えずに仕事をしていました。

 

どうしたら上司から仕事を教えてもらえるだろう

どうしたらみんなより完璧に早く仕事が出来るだろう

どうしたら欠点のない人間になれるだろう、と。

 

でもそう思っていたのと同時期に

 

従業員さんたちは

 

いくつもの作業上の困難にあたっても

進捗を止めてはならないと

自分たちだけで解決し

会社のために

会社に言わず

動いてくれていたのです。

 

意見が言えない

 

そのせいで会社が払うべき費用を出させてしまった

 

意見が言えていれば

 

「これからは何でも言ってね、何でも買うからね!!」

私は必死にこう言うしか出来ませんでした。

 

自分のビジョンを話してそれがいいと思ってくれたらきっと味方になってもらえる。

そう思い込んでいた自分はなんて浅はかだったんだろう

簡単なもんじゃない

人の気持ちを変えるってのは

 

まずは自分が変わらなきゃ

そして行動しなきゃ

 

私は決めました。

 

従業員さんの要望は必ず即日実行する

 

意見を言えない雰囲気を打開して

意見を言えば必ずすぐ意見に対して即アンサーしてくれる職場

出来るかできないかは置いといて

とにかく

 

私に言えばすべて実行します!!

すぐに!!

実行することだけは!!

してみせます!!

 

 

あの日会談を終えた直後は完全に打ちひしがれてましたが、

あの日から自分で決めた信念

従業員さんファーストの精神で

要望を最優先で通してきたつもりです。

 

その結果は

未来へと繋がって行くはずです。

少なくとも今現在

過去に撒いた種は目を出してきている

そう私は感じています。

 

 

次回、さらに願いを叶えるぞう!?