雇われ嫁の備忘録

42歳主婦が人生を変えようと奮闘する話

第9話 聞き取り調査

上司である夫の母は、それはそれは働き者だ。

もう70も目前だというのに朝は早くから夕方まで働き通し

お昼ごはんもままならず、時には夜にも溜まった仕事をこなし、果ては夜中にも工場へ赴いて製品の管理をしている

 

ここへ嫁いでくる前に、義理の父から言われた言葉。

「ここは休みは無いよ。それでも大丈夫かい?」と。

確かにそう言われて私は大丈夫ですと答えた。

愛する夫と一緒ならどんな事だって乗り越えられると信じて疑わず、もともと働くことが好きだった性格もありきっとできると自信満々に受け入れた

自己肯定感にあふれていたあの頃の私。

 

休みがない

 

とは聞いていたけれども!!

夜中や早朝まで出なければいけないとは聞いてないぜ夫さん!!

いずれ夫の母のように私もしなくてはならないのかと軽くめまいに襲われたが

大丈夫。きっと自分ならできる。

だって愛する夫と一緒に働けるんだから!

 

今までずっと遠距離恋愛で数ヶ月に一度しか会えなかった。

デートだって数えるほどしかしていない。

いつだって一緒にいたくて結婚を決めたんだ。

これからはずっと一緒にいられるんだからなんだって平気

一緒に頑張って苦しいことも乗り越えて、会社をやっていくんだ

 

そう思っていました

 

アハハハハハ

大爆笑

草生える

大草原

 

今となっては過去の自分に

よーーーく考えよーー

人生は大事だよーーーー

とでも歌ってあげたい。

 

ともあれこの会社は、未だ社長とは名ばかりの夫とその嫁が

会社でのすべての権限を握る夫の母のもとで

司令に忠実に従って労働をするという構図の

なんともフレッシュさにかけた

昭和臭がプンプン香る

小さな町のちいさな食品工場なのでありました。

 

 

前話の新入社員さんに言われたことで、会社を変えていきたいと思うようになった私は思いました。

 

「まずは味方を作らなければならない」

 

私には味方と言えるような関係の人がいませんでした

愛する夫はどうしたの?と思われるかもしれませんが、ここがこの会社の闇のひとつなのです。

察しの良い方はお気づきかもしれませんが

そうです

夫は重度のマザ○ンなのです!!!

お母さん大好きって言う面もあるかもしれませんが、それより恐ろしいのが

母の言うことに絶対に逆らえない………

何ということでしょう

 

ということは、私がああしたい!こうしたい!といっても

夫の母がNO!!!といえば、それは却下となる運命なのです。

 

怖いですね……

未来ある若者の意見を通してくれない数年で引退が決まっている年配者……

怖すぎます……

この先5年10年を見据えることなくその日その日単位でしか進んでいかない会社

お先真っ暗とはまさにこのことです。

 

普段従業員の方たちは、すべて夫の母の指示で会社での仕事を進めていっています。

それが効率が悪かろうが、二度手間になろうが、疑問を投げ掛けたくなるようなことであろうが

逆らわず ハイと答えて こなすだけ

みんな自主的に考えて作業したほうが効率的だと思っていても、それをぐっと堪え、言われたことだけをやる。

やっては聞く。一つ終わっては聞きに行く。何回も何回も上司の元へ出向いて聞きに行く。

こんな非効率な作業形態に従業員の方たちの不満もよく耳に入ってきてはいたのです。

 

恐らくみんな変えたいと思っている

この会社に変化を求めている

でもハナから諦めてる

わかるよ…だってそのほうが楽だもん……

私と従業員さんたちの考えは近いんじゃないかなあと感じていたのです。

 

変えたい

 

だったら

 

みんなの中で

 

唯一権限を持っている私が

 

やってやろうじゃん!!!!!

 

 

思い立ったその日の就業間近

私は2つある製造部門のうちの、どちらかというと上司の目が届かない方の部署の従業員さんの一人に声をかけました。

「ちょっとお話をしたいと思っています。就業後、10分位で終わるので事務所に来ていただけないでしょうか」

その方は思っていたより淡々と

「ハイわかりました」

と言ってくれました。

 

意外……急なお誘いだったからもっとびっくりさせてしまうかと思った……でも特になんの用事かも聞いてこないし……私と違って落ち着いてるなあ……

 

さてと

10分か…

雑談じゃない

未来へ繋げるための第一歩だ

話す目的はもう決まっている

私の狙い、それは

 

味方になってもらう

 

こうして私主催の初めての会談が開かれることになったのです

 

次回、従業員さんから出た意外な発言……!