雇われ嫁の備忘録

42歳主婦が人生を変えようと奮闘する話

第6話 筋肉は

コロナで日本中が暗いムードに包み込まれていました。

なるべく人との接触を避けてうちに籠もるのが吉。

外にでも出ようものなら、またたく間に感染してしまう

そんな錯覚にさえ陥るくらい、このウイルスに対する人々の恐怖は計り知れない時期でした。

まだ東北には来ていない。

頑張れ東北!と、テレビのニュースの度に何故か応援していたあの頃。

学校も臨時休校となったが、子供達は思いがけない長期休みにまだ無邪気に喜んでいました。

 

私はというと、

極寒の地で、ようやく見つけた南国のパラダイスに片足だけ突っ込んだだけで強制的にもとの場所に帰国させられてしまった。

そんな気持ちでしばらくは虚しい日々を過ごしていた

SNSで歌手さんの今後のスケジュール情報を調べるが、どれもこれも絶望的だった。

 

今、自分にできることはなんだろう。

 

そうだ、筋トレして見よう。

コロナ禍で運動不足解消が推奨されている今なら、家族に不審がられることもなく自然に始められるんじゃないか?

 

とてもじゃないが子供や夫に、歌手さんのコンサートに行くときにおしゃれな洋服を着こなしていきたいからなんて絶対に言えない(笑)

 

そう思い立った私は、おもむろに腹筋をし始めた。

 

お、なんとか10回出来た。

でもやっぱり疲れるな。

 

次の日も

そのまた次の日も

歌手さんのコンサートに行ける日が来ることを原動力にして

私はその日に出来るところまで、という縛りで毎日腹筋をしていった。

 

10回程で限界だった腹筋が一週間たつ頃には連続で30回出来るようになっていた。

 

その頃、私はSNSで歌手さんにコメントを送る事を生き甲斐としていた。

おはようとツイートされれば、おはようございますとコメントし、

おやすみとツイートされれば、おやすみなさいといいねマークとリツイート

 

腹筋を継続できていることに自信がついた私はこんな事を思いついた。

 

歌手さんのツイートのいいねマークの数だけ腹筋をしよう!

 

完全なる自己満足でしかないこの思いつき。

なんだか歌手さんへのリスペクトが変な方向へねじ曲がって働いちゃってますが、これが筋トレの魔力なのか

成果が表れると、自分を厳しい方厳しい方へと追い込んで行っています。

でも私がどんなに腹筋を鍛えたって歌手さんにはなんの利益も生まれ無いんですよね…

なのにこれで歌手さんを応援しているつもりなんです…

 

 

ともあれ始めた自己満ルール

当たり前ですがいいねの数はその時々で変わってきます

普段は100行くか行かないくらいですが、たまに300とかなったりして

それでもこの勘違いファンは苦しむどころか逆に燃えてくるんですね

いいねが多いことは私も嬉しい!だから腹筋でお祝いだ!!

もう意味がわかりません。

 

でも目的は毎日続ける事。

そのための燃料は何でもいいんです。

私は歌手さんにまた会える日を信じて続けました。

そして、コロナが収束するまでという目標を決めました。

 

 

そんなこんなで一ヶ月ほど過ぎたある日。

ふと自分の腹筋が驚くべき変化をしていることに気付きます。

何気なく自分のお腹に触れたその時

 

……硬い………!!!!!

 

お腹が硬いッッッ!!!!

 

こんなに硬いお腹をさわるのは生まれて始めての体験でした。

腹筋ってこんなに硬くなるもんなの?

人間の体ってこんなに変わるんだ。

 

 

気がつけば私は腹筋を連続50回続けられるほどになっていました。

いいねが200の時は50回を4セットやりました。

歌手さんに会えない悔しさを、自分自身に苦しさを与えることで発散させていました

 

体重も2キロほど減ってウエストが締まってきたように思えました。

お風呂では努めて見ないようにしていた全身を臆することなく見れるようになりました

仕事も、体力がついたおかげで夕方まで動き回れるようになりました。

早朝に仕事場に行くのも苦痛ではなくなりました。

筋トレを持続しているという事実が自信となり、心に余裕が生まれました。

 

筋トレを毎日続ける

そう自分で決めた事を実行し続けていたら結果がついてきた。

即効性があるものではないけれど間違いなく必ず報われる。

 

ちょっぴり不純な想いから始めた筋トレ。

でも、この事は私の人生において間違いなく運命を違うレールに導いた。

今となってはそう思えるのです

 

もし歌手さんを知らずにいたら

もしコロナがなかったら

私はどんな日々を過ごしていたのでしょう。

 

今日も私は筋トレを続ける。

コロナが収束するまで続ける。

そしておしゃれな格好でコンサートに行くんだ!!

 

実際に口に出して言う日が来るとは思わなかった

「筋肉は裏切らない」

そして

「腹筋を割ってみたい」

 

自分で決めてそれを続ければ必ず結果は出る

自分で決めたことは絶対に続けられる

 

これが一人の主婦が40年余りの人生で初めて自分で導き出した自分のための答えでした

 

 

次回、とうとうコロナが町に……!